1.立冬とは(2025年11月7日~11月21日)
「立冬(りっとう)」は、暦の上で冬の始まりを告げる節目。
紅葉が美しく、昼間は穏やかでも朝晩は冷え込みが増し、空気の乾燥とともに冬の気配が感じる頃です。
自然界では、動植物の活動がゆるやかになり、静かにエネルギーを内にためる季節へと移っていきます。
東洋医学では、立冬を境に「陽の気」が落ち着き、「陰の気」が深まると考えられています。
外へ向かって発散していたエネルギーを内側に戻し、心身を休めて力を養う時期です。
気候の変化が激しく、季節のリズムを感じにくい現代だからこそ、意識的に「体を休める」「心を鎮める」ことで、自然の流れに調和しながら冬を健やかに過ごすことが大切です。

2.立冬に起こりやすい体と心の不調
①冷えによる「腎(じん)」の弱りと疲労感
冬は、体を温める力=「陽気(ようき)」が弱まり、冷えを感じやすくなる季節です。
この冷えの影響を受けやすいのが、生命エネルギーの源といわれる「腎(じん)」。
腎は体の深部を温め、成長や老化、免疫、気力などを支える大切な働きを担っています。
ところが、冷えが続くと腎の働きが弱まり、体の巡りが滞りやすくなります。
その結果、疲れが抜けにくい・朝起きるのがつらい・腰や足のだるさ・むくみなど、冬特有の不調が現れやすくなります。
②乾燥による呼吸器・肌の不調
乾いた空気と冷気により、肺や皮膚の潤いが失われやすくなります。
東洋医学では「肺は皮毛を主る」とされ、肺の潤いが肌や粘膜の健康を支えます。
鼻やのどが乾燥すると風邪をひきやすく、咳や声のかすれ、肌のカサつきにもつながります。
暖房による乾燥も注意が必要です。
③自律神経の乱れによる心の不調
日照時間が短くなると、気分が沈みやすく、不安感を感じることも増えます。
東洋医学でも、体が冷えたり疲れたりすると、エネルギーの巡りが滞り、心のバランスも崩れやすくなると考えられています。
3.立冬の養生ポイント
①体を温めて腎を守る
冬は「エネルギーを蔵(ためる)」季節。
腎は生命力の源であり、冷えから守ることが養生の基本となります。
体を温めることは、単に寒さをしのぐためではなく、体の中心にあるエネルギー(腎気)を保ち、生命力を蓄えるための大切な働きです。
特にお腹・腰・足元は冷やさないよう意識しましょう。
温めるときのポイントは「じんわり」「下半身から」。
熱すぎるお風呂や辛すぎる食べ物は、体の潤いを奪ってしまうこともあるので、無理に熱を加えるのではなく、やさしく温めることを心がけましょう。
②睡眠・休息でエネルギーをためる
十分な睡眠と休息は、体の疲れを取り、心を落ち着かせるだけでなく、体の奥にある「腎気(エネルギー)」をしっかり蓄えるための大切な時間でもあります。
夜更かしや過度な刺激を避け、静かな時間を確保することを意識しましょう。
③心の静けさを意識する
心が落ち着かないと、気(エネルギー)の流れが乱れ、体にためておきたい力が消耗しやすくなります。
一方で、心を穏やかに整えると、気の巡りが安定し、体の内側から温もりが戻ってきます。
外に向かう気持ちを少しゆるめ、自分の内にある静けさを大切にしましょう。
心が穏やかであることが、冬のエネルギーを育てる土台になります。
4.立冬におすすめの食材&生活習慣
①おすすめの食材
- 黒ゴマ:小さな粒に栄養がぎゅっと詰まった黒ゴマは、腎の働きを助け、寒さに負けない体づくりをサポートします。カルシウムや鉄分、良質な油も含まれており、体を温めながら潤いも補ってくれます。
すりゴマやペーストにして、和え物やスープに加えたり、煮物の仕上げに振りかけたりすると、香ばしさと栄養を効率よく取り入れることができます。 - 長いも:古くから滋養強壮の漢方食材として用いられ、胃腸をやさしく整え、疲労回復を助けます。粘り成分(ムチン)が腸を潤して便通を整え、乾燥による内側の渇きを和らげます。
短冊に切ってサラダにしたり、とろろにして温かいご飯にかたりするのがおすすめです。また、軽く焼いて塩や味噌で味付けしても美味。冬の「気」を補う一品です。 - 鶏モモ肉:鶏肉の中でも脂肪分のあるモモ肉は、体を温める作用が強く、冬の入り口にピッタリの食材です。タンパク質も豊富で、疲労回復や免疫力の維持にも役立ちます。冷えによって消耗しがちな‟陽の気"を補い、体のエネルギーを支えます。
生姜やネギと合わせると、さらに体を内側から温める効果が高まります。

②おすすめの生活習慣
- 下半身と三つの首を中心に温める
寒さが深まる時期は、体の中心と末端をしっかり温めることが大切です。
下半身は冷えが溜まりやすいため、腰やお腹、足元を温めることで全身が効率よく温まります。
また、三つの首(首・手首・足首)も冷えやすい部位です。
ここを温めると血流が良くなり、体の芯まで温かさが広がります。
入浴は、熱すぎるお湯ではなく、少し温かめ(40~42℃程度)のお湯に10分~15分ほどゆっくり浸かるのが理想です。
肩までつかる全身抑雅難しい場合は、足湯でも十分です。夜の足湯は、冷えの予防や睡眠の質の向上に役立ちます。
日中は、腹巻やレッグウォーマーを着用するなど、下半身をやさしく温める習慣を取り入れましょう。朝起きたらまず靴下を履くことも、手軽にできる冷え対策です。
温かい飲み物を取り入れることで、お腹の中からじんわり温められます。 - 夜の休息でエネルギーをためる
十分な睡眠は、体の疲れを取り、心を落ち着かせるだけでなく、体の奥にある「腎気(エネルギー)」を守り、回復力を高める時間です。
夜は体と心を「休息モード」に切り替え、できるだけ日付が変わる前に布団に入るようにしましょう。理想としは23時前ですが、無理のない範囲で眠る習慣を整えることが大切です。
就寝前は、スマホやテレビなどの強い光や刺激を避け、照明を落として静かな音楽や温かい飲み物(ノンカフェイン)でリラックス。
お風呂は、1時間前までに済ませ、体温が緩やかに下がるタイミングで布団に入ると、深い眠りに入りやすくなります。
眠りが浅いと感じたときは、寝る前の深呼吸やストレッチも効果的です。体の緊張がほぐれ、呼吸が深まり、心も静まります。 - 日中もこまめに休息を
日中も疲れを感じたら無理をせず、こまめに休息をとることが大切です。
「休むことも養生」と考え、ゆとりを持ったスケジュールで過ごすことで、体の回復力も高まり、夜の眠りも深くなります。
無理に動き続けず、こまめに休息をとることも大切な養生です。
1〜2時間ごとに軽く伸びをしたり、温かいお茶を飲んで一息ついたりするだけでも、気の巡りが整います。
「休むことも仕事のうち」「休むことも養生」という心構えで、ゆとりのあるスケジュールを心がけると、夜の眠りも深くなります。 - 心を鎮める時間を持つ
寒さや日照時間の短さで、気持ちが揺らぎやすくなる時期です。
「なんとなく気分が落ちる」「やる気が出ない」と感じるのは、体が冬のペースに合わせようとしている自然な反応です。
がんばりすぎない時間を意識的に作りましょう。
朝や夜に、ほんの数分だけ目を閉じて深呼吸をするだけでも、心が落ち着きます。
頭の中を空に戻すように、何も考えず静かに呼吸に意識を向けると、心の巡りが整っていきます。
また、香り(アロマ)、音楽、キャンドルの光など、五感をやさしく満たすやさしい刺激を取り入れると、心が緩みやすくなります。
静けさの中で心が整うと、自然と体の中にもエネルギーが満ちていきます。

5.おわりに
立冬は、冬の始まりを告げる季節。自然が静まり始め、力を内に蓄えるように、私たちも心と体を整えてエネルギーを養う時期です。
寒さや日照時間の短さで気持ちが揺れるのは、体が冬のリズムに順応しているサイン。
無理に元気を出さず、体を温め、眠りを大切にし、静かな時間を持つことが大切です。
心と体がゆっくり休めるように、温かい飲み物や深呼吸、下半身の冷え対策など、日常に小さな工夫を取り入れ、冬本番に備えましょう。
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