長く暑い夏が終わりやっと秋を感じられる季節になりましたね。
今年の夏に話題となった映画『国宝』、皆さんは鑑賞されましたか?
その映画を見て、糖尿病の恐ろしさを感じた人も多いのではないでしょうか。
今回はその糖尿病について、一般的な知見に加え東洋医学の視点からもみていきたいと思います。
糖尿病とは?日本の現実
まず、糖尿病とはその名の通り尿に糖が混ざり一緒に漏れ出してしまうことをいいます。
血液検査項目の「血糖値」、この数値がある一定以上になると糖があふれ出してしまうため高血糖のサインとなります。つまり、何らかの原因により血糖コントロールができず血糖値が高い状態が糖尿病です。
2023年の調査によると、糖尿病の患者数は552万人を超えているそうです。
ただしこれは治療を受けている人の数であって、治療を受けていない人も含めると1000万人を超えると言われています。これはおよそ10人に1人の割合です。
高血糖状態は全身にさまざまな影響を及ぼします。
糖尿病が進行・慢性化していくと合併症を引き起こす可能性が高く、特に【神経】、【目】、【腎臓】に関連する症状は三大合併症と呼ばれています。
腎臓が正常に機能しなくなると、身体の中の毒素や老廃物、余分な水分などをろ過できなくなります。治療として腎臓の代わりにろ過する透析を行います。透析の原因1位となるのが糖尿病による合併症の腎症だと言われています。
治療には1回約3時間、これを週に2~3回行う必要があり、生活にも少なからず影響を与えてしまいます。

慢性炎症を引き起こすからだの『糖化』
糖尿病の指標の一つにもなる数値として、「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」があります。
これは、血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)がブドウ糖とくっついたものをいいます。
タンパク質や脂質がブドウ糖とくっつくことを『糖化』と呼び、HbA1cはヘモグロビンが糖化したものです。
赤血球の寿命は約4か月(120日)であり、HbA1cの数値は大体1~2か月前の状態を表わします。
糖化したものをまとめて『AGEs(終末糖化産物)』と呼びますが、これが血管や細胞に蓄積するとさまざまな悪影響を及ぼします。
例えばAGEsはからだに異物だとみなされ、免疫システムによる炎症反応が起こり、まわりの細胞や血管などが損傷してしまいます。これが動脈硬化の引き金となってしまいます。
東洋医学での糖尿病の考え方
東洋医学には「糖尿病」という病名はない
東洋医学では、「消渇」という証が糖尿病に値します。
「消」はたくさん食べるにも関わらず痩せる、「渇」は渇くこと(特に口渇)を意味します。
一般的にも、糖尿病の3大症状として言われているのが『多飲』・『多食』・『多尿』です。
これは、大きく分けて3つの原因から体内に熱が生じることによって起こると考えられています。

糖尿病の原因は体内の『熱』!熱を生む3つの要因
食事の不摂生による【湿】
甘いもの、味の濃いもの、脂っこいものがお好きな人も多いのではないでしょうか。
砂糖や油が多いと、ベトベトしたものが多く当てはまりそうですね。
東洋医学では、「五臓」といってからだの機能を5つに分けて考えることが基本にあります。

このうち、食事と関係が特に深いのが『脾』です。
消化吸収に関わる胃にも関係し、食べたものからエネルギーを作る働きがあります。
脾は湿気や冷えを嫌います。
湿気が高い日はからだがべとつくと感じたことがある人もいるでしょう。
べとべとする状態は、砂糖や油の多食によっても生まれてしまいます。
また、油の多いものは消化に時間もかかり内臓の負担も大きくなります。
これに加えて飲酒や食事量の過多(暴飲暴食)などが重なると、消化は追いつかなくなってしまいます。
脾の食物を消化し運ぶ役割が停滞していくと、「湿」がたまり、これが熱を生みます。
体内で余分な水分(湿)と熱が結びつくと「湿熱」となります。
糖尿病で痩せてしまうのはなぜ?
胃に熱がこもり続けてしまうと消化機能が異常に亢進してしまうようになり、消化スピードが速くなります。そのためいくら食べてもお腹が空き、食べても食べても太らない、痩せていく状態に陥ります。
「食べても太らない」というワードだけ聞くと羨ましがる大人は多いかもしれません。
しかし、胃に熱があるということは食物が熱によって消耗され、脾のつかさどる肌肉への栄養も不足してしまうことになります。
甘いものは腎に悪い?!
また、五臓と同じ考え方を味にも当てはめ、五臓それぞれに関係の深い「五味」が存在します。
「脾」に関係するのが「甘」です。

また、五臓の関係図には2種類の矢印が描かれており、それぞれ
緑の矢印は「相生(そうせい)」・・・生み助ける、強める
青の矢印は「相剋(そうこく)」・・・邪魔する、抑える
という特徴があります。
関係を見ると「脾(甘)」→相剋→「腎」、つまり『甘いものの食べすぎは腎を弱める』と読み取れます。
「腎」は膀胱などの泌尿器に関係が深いこともあり、腎障害に繋がることもイメージしやすいですよね。
甘いものに限ったことではありませんが、食習慣は糖尿病の発症に深く関わることだと言えます。
糖尿病の治療をみても、第一に食事指導や運動指導が行われます。
生活習慣病のひとつ(Ⅱ型糖尿病の場合)とされていますので、食事やその他生活の見直しも病気の予防や悪化防止につながると考えられます。
イライラ・怒りなどによる【肝気鬱結】
五臓の「肝」は血液を貯蔵し、自律神経を介した全身への血流の調節を行います。
また、精神や情緒の安定や視覚の調節にも関わります。
感情やメンタルの起伏が激しくイライラしたり、怒りやすかったり、ストレス過多だったりすると『肝気鬱結』といって、肝のエネルギー(気)が滞ってしまい、血流の悪化や調節がうまくできなくなります。
エネルギー(気)の停滞が長期化していくと、どんどん熱を帯びてしまいます。
熱は上へ昇る性質があるため、上半身(特に頭部)の症状が出やすく、イライラの悪化や目の充血、眼精疲労、頭痛、微熱、ほてり、不眠、皮膚トラブルなどにもつながりやすいです。
また、この熱が慢性化していくとからだの水分(陰)が消耗され、口が渇きやすくなってしまいます。
潤い・エネルギー不足の【腎虚】
五臓の「腎」は、生まれ持った生命力を備え、発育や成長、それから老化に関係が深いです。
「腎」にはさまざまな要素があります。ここで、ロウソクをイメージしてみてください。

ロウソクで例える「腎」
・ろう・・・腎精 物質。時間とともに減っていく
・芯(火のつく先端部分)・・・腎陰💧
・炎・・・腎陽🔥
・光、暖かさ・・・陽気
ロウソクの火がついている間=生命活動を行う時間 だと思ってください。
ろうが減るとだんだん炎や明るさは小さくなっていきますし、そもそも芯がしっかりしていなければ炎は消えてしまいます。
腎精(ろう)は生まれ持ったものですが、生活上の激しい消耗や過労などにより少なくなってしまいます。
また、腎精は腎陰(芯)や腎陽(炎)の元であるため、腎精の不足は生命力にも大きな影響を及ぼします。
腎陰不足
陰の消耗により、からだが熱を持つ状態を「虚火」といいます。
これが上半身にさまざまなトラブルを生むことになりますが、五臓の「肺」にも及ぶことで、肺の水分代謝の働きも低下してしまいます。
この水分代謝とは、水分を全身へ送るための水道の調節をイメージしてください。
この調節がうまくいかなくなると水分を全身に送れず、持て余した水分は尿として出すことになります。
つまり、多尿や頻尿になってしまいます。
腎陽不足
腎には「気化作用」といって、からだに必要な水分は再吸収・不要な水分は尿に変えて排出する役割があります。
腎陽(エネルギー)の不足により水分の再吸収ができなくなったとき、水分→尿に変えられることができれば排出できます。再吸収できなかった水分も排出するとなると、尿量は増えますので多尿や頻尿につながりやすいです。
しかし、再吸収が不十分な上に水分→尿に変える力も不足してしまうと、水分が過剰に溜まり、むくみや排尿困難などの症状があらわれます。
さいごに
「糖尿病は漢方では治せないのではないか。」と思われることも少なくないと思います。確定診断されてしまうと、もちろんすぐに血糖値を下げる薬が必要になってきますが、血糖値に不安がある方や健康診断などで経過観察などと言われてしまった方など、診断はされていない『未病』の段階でアプローチできるのが東洋医学の良さでもあります。
食習慣や生活リズム、ストレスの度合いなど一人として同じことはないため、おひとりおひとりに合った治療や改善策が必要となってきます。
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