「妊娠しやすい体」という言葉を聞くと、どこか特別な体質を思い浮かべる方もいるかもしれません。

でも実は、妊娠しやすい体とは”整っている体”のこと。

特別な力があるわけではなく、誰の体にも、ちゃんと妊娠する力が備わっています。

ただ、日々の忙しさやストレス、生活習慣の乱れなどで、その力が少しずつ弱まってしまうことがあるのです。

そんなときにこそ、整えるケアが大切なのです。

今回は、中医学の考え方をもとに「妊娠に必要な力」と「その力を下げてしまう日常のくせ」についてやさしく解説していきます。

妊娠のために女性に必要な力

妊娠は偶然ではなく、体のさまざまな力がバランスよく働いたときに訪れます。

もちろん、男性の精子の質や数も大切ですが、今回は女性の体に焦点をあててお話しします。

現代医学では、妊娠するために必要な条件は次の通りです。

  • 正常に排卵があること
  • 卵子と精子が出会って受精できること
  • 受精卵が子宮に着床できること
  • 妊娠が継続し、赤ちゃんを育てられること

つまり「卵子を育てる力」、「受け止める力」、「育てる力」が妊娠力の3本柱なのです。

では、それぞれを中医学の視点で見てみましょう。

①元気な卵子を育てる力

妊娠は、まず「元気な卵子」が育つことからはじまります。

卵胞は少しずつ成長しながら、排卵の準備をしています。

この期間に体が疲れていたり、栄養が足りなかったりすると、卵子の成熟がうまく進まなくなります。

中医学では、この過程を支えるのが「腎(じん)」の力。

腎は生命エネルギーの貯蔵庫とされ、ホルモン分泌や月経周期、卵の成長を支える源です。

腎のエネルギーが満たされていると、排卵がスムーズに起こり、質の良い卵子が育ちやすくなります。

一方で、過労・睡眠不足・ストレスなどはこの腎の力を消耗させます。

一時的なものであれば問題ないですが、毎日積み重なって長期化してしまうと、体調が乱れやすくなってしまいます。

そのため、日常の疲れや生活の乱れが卵子の成長にも影響してしまいます。

②受精卵を受け止める力

排卵後、卵子が精子と出会って受精すると、受精卵はゆっくりと子宮に運ばれます。

そして子宮の内側(子宮内膜)がふかふかのベッドのように整っていると、受精卵は安心してそこに着床します。

内膜が薄かったり、冷たかったりするとベッドに受精卵が落ち着けません。

子宮内膜がふかふかのベッドであるためには、

・体の気(エネルギー)や血が十分に満たされている

・血の巡り良い

このような体のバランスが大切とされています。

③妊娠を維持する力

受精卵が無事に着床すると、体は妊娠を維持するためのモードに入ります。

ホウモンバランスが変化し、子宮の筋肉を緩め、赤ちゃんを包み込む環境を整えていきます。

体の内側に十分なエネルギーがあることで、赤ちゃんをしっかり支えることができます。また、血が十分に子宮に行き届くことで、赤ちゃんに十分な栄養を送ることができます。

この時期は腎と脾(胃腸、消化器を司る臓腑)が特に大切とされています。

一方で、エネルギーが不足していたり、体の巡りが乱れていたりすると、流産や不安定な妊娠の原因になることがあります。

体に余裕がある状態を維持したい時期です。

東洋医学で考える、妊娠力を低下させる主な要因

①腎虚タイプ

腎虚には3つのタイプがあります。

・腎気虚:エネルギー不足。記憶力や集中力の低下、疲れやすく、月経周期が乱れやすい

・腎陽虚:体を温める力の低下。冷え症で、体温が低め、低温期が短い

・腎陰虚:体を潤す力の低下。寝汗、のぼせ、月経量が少ないなど

特に20代後半~40代は、妊娠を考える方も多い時期であると同時に、仕事やストレスでエネルギーを消耗しやすい時期です。

「まだ大丈夫」と思っていても、無理をし続けると腎の力はじわじわ消耗してしまいます。

②いつも考え事や悩み事があるタイプ

ストレス、我慢、悩み事が多い人は「気滞(きたい)」の状態になりやすいです。東洋医学で気滞とは、体の気(エネルギー)の流れが滞ってしまっている状態を指します。

このタイプの方はホルモンバランスや月経周期が乱れがちになります。

イライラ、ため息、胸張って痛い、PMSの悪化などがサイン。

これは体の中でエネルギーの通り道が詰まっている状態です。

気を巡らせるには「笑う」「歌う」「話す」だけでも良いとされています。

また、運動も気滞の解消に効果的です。

③血流が悪いタイプ

血流が悪くなっているタイプの方を東洋医学では「瘀血」と呼びます。

このタイプの方は、子宮内の環境が固くなりやすく、着床しづらくなることがあります。

生理痛が強い、レバー状の塊の経血が出る、肌にシミができやすい、等が特徴です。

冷たい飲み物を控え、温かいスープや根菜類で体を温めることが大切です。

血の流れを良くする意識が、子宮ベッドをやわらかくします。

④水毒タイプ

むくみ、体が重だるい、軟便などの症状が特徴です。

体内の水の巡りが悪いと、気(エネルギー)や血の巡りを邪魔してしまいます。

そうすると代謝が落ち、ホルモンバランスにも影響します。

梅雨の時期や天気の悪い日、湿度の高い日に体調を崩しやすい人は、このタイプかもしれません。

体を冷やす生野菜をはじめとした生もの、カフェインの摂りすぎに注意し、、ハトムギ、緑豆、小豆などを摂って、余分な水を体から出すと良いです。

今日から始めよう!自分でできる妊娠のための生活養生

①バランスの良い食事

体を作るのは「食べ物」。それは卵子にも言えることです。

栄養不足の状態だと、良い卵子を作ることができません。

極端な糖質制限やダイエットは、ホルモンを乱し、冷えを招きます。

「白・黒・赤・緑・黄」など、色とりどりの食材を摂るように意識すると、自然と栄養バランスを整えやすいです。

また、ポイントは「和食」を中心とした食事をすることです。

特にパンなどの小麦粉を中心の食事スタイルの方は、お米を中心に変えるだけでも違ってきます。

ぜひ試してみてください。

②睡眠不足が体質を変えてしまう

夜更かしは「腎」を最も消費させる習慣のひとつ。

「腎」が要になる妊娠では、質の良い睡眠が重要です。

できれば23時までの就寝を目標に。

寝る直前だけでなく、1日を通してスマホやパソコンで目を酷使しすぎると、眠りが浅くなってしまうので注意しましょう。

③考え事をしすぎない

「どうして・・」「なぜ・・・」

仕事や家庭、日常の様々なことを、ずっと深刻に考え続けていませんか?

そんな悩みが強いほど、気の流れが滞り、ホルモンのバランスが乱れてしまいます。

心は体の一部です。焦る自分を責めず、「今、体を整えている時間」だと思うことが、妊娠力を高める大切なステップです。

④過労に注意

頑張り屋さんな方ほど、体のサインを後回しにしています。

残業、睡眠不足、家事、SNSなど・・どれも少しずつ体のエネルギーを奪います。

エネルギーが減れば、当然ながら「命を育む力」にまわす余裕がなくなります。

「今日は頑張りすぎたな」と思った日は、ゆっくり湯船に浸かって、早めに寝ましょう。

不妊症が疑われる場合は医療機関へ

生理周期が極端に不安定、2年以上妊娠の兆候がない、などの場合は早めに婦人科や専門クリニックでの検査をおすすめします。

東洋医学と現代医学は、どちらも並行して行うのが理想です。

予算的に難しい場合は、自分に合っていると思う方を選んで相談してみましょう。

妊娠にいちばん大事なのは、整っている体

焦る気持ちや不安を抱えているあなたにこそ、伝えたいのは「自分の体を責めないでほしい」ということ。

体はあなたを裏切っているのではなく、「今、整える時間が必要なんだよ」と教えてくれているのかもしれません。

どうか今日から、体の声を少しだけ聞いてあげてください。

その一歩が、未来の命を迎える準備になるはずです。

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