年齢を重ねると、それまで問題なかったのに急に血圧が高くなってきて気になる方がいらっしゃいますよね。
「血圧の薬って一生飲み続けないといけないんでしょ?」
「血圧が高いって言われたけど、病院の薬は飲みたくない!」
などと相談に来られる患者さまも少なくありません。
今回は、そんな血圧について東洋医学の考え方も踏まえながらお話していきます。
「血圧を上げる」反応が起こっているのはなぜ?
私たちが生きている間、血液はからだの中を巡っており、およそ30秒でからだを1周するといわれています。
そもそも、なぜ血圧が上がるのでしょうか?
「血圧を上げる」ということは、血流を勢いよくしようとしているようなイメージです。
勢いよく流さなければならない理由を考えてみましょう。
・血液が隅々まで届かない状態になっている
・血液の流れる血管にゴミが溜まっているせいで流れが悪くなっている
・血液中に老廃物が多く、流れにくくなっている
このようなことが考えられます。
つまり、血液が行き渡りにくくなっていることへの対処の結果が血圧を上げる反応だといえます。
それぞれについて詳しくみていきましょう。
血液の不足
血液は全身をめぐり栄養や酸素を運んでいます。血液が不足した状態だと全身の細胞に必要なものを届けることができなくなってしまいます。そのため圧をかけて血液を送ろうとするのです。
血液だけでなく、栄養や酸素の不足も細胞にとっては致命的です。
栄養は私たちが口から取り入れた食事そのものを指します。
食べたものでしか身体を作ることはできませんから、毎日の食事は細胞ひとつひとつにとっても非常に重要なものです。
高血圧症に限らず、「生活習慣病」は生活習慣に起因するものです。
食事、運動、生活リズムなど「習慣化」してしまうと良いことも悪いことも当たり前にできてしまうようになります。
その積み重ねによってからだはいい方向にも悪い方向にも変化します。

血管の劣化
コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)は、健康診断の血液検査の項目などで目にしたことがあるのではないでしょうか。
これら脂質が増加すると血管の壁にくっつき、血管を狭めてしまいます。
それだけでなく、硬くなり血管の弾力性が低下し、朽ちたホースのようになってしまいます。これが動脈硬化と呼ばれます。
また、もろくなった血管は破れやすいためさまざまな病気の原因となります。
過剰な脂質・糖質の摂取が脂質異常の大きな要因であるため、食事の見直しはここでも重要ですね。
老廃物の増加
脂質以外にも血液中の糖が増えることで血液の粘性が上がり、ドロドロ状態になります。
ドロドロな血液が狭い血管を通ると血管に圧もかかります。
東洋医学では血液の汚れや滞った状態を「瘀血(おけつ)」とあらわします。
瘀血は痛みの原因ともなり、重い生理痛や肩こり、筋肉痛、傷の治りが遅いなどさまざまな症状につながりやすいです。
また、塩分のとりすぎによるナトリウムの増加が水分の増加をまねき、それに伴い循環する血液量も増えます。これは血液を押し出す力(心拍出量)の増加につながるため、血圧を上げる要因となります。

自律神経の乱れが血圧にも影響?
血圧は自律神経によりコントロールされており、交感神経が優位になると血圧を上げるように働きます。
運動時などで一時的に交感神経優位になるのは正常ですが、“何らかの原因”により慢性的に交感神経優位な状態になっていると、常に血圧も高い状態が続いている可能性が高まります。
その原因は様々ですが、現代社会では精神的なストレスの蓄積がその大部分を占めているのではないでしょうか。
また、高血圧の程度が増加すると頭痛やめまい、耳鳴り、ほてりなどの症状を伴うなど、生活に支障をきたしてしまうケースもあります。
現代のストレス社会と「肝」の不調

東洋医学ではからだの機能を「五臓」に分けて考えます。
人間のからだを構成するのが「気・血・水」であり、このバランスが崩れてくると様々な不調が生じます。
五臓の「肝」が、ひとことでいうと「血流の調節」を担います。
自律神経やメンタル、睡眠の安定などにも大きく関わる部分だといえるのですが、ストレスの影響を受けやすいところでもあります。
過剰なストレスの蓄積は交感神経優位な状態につながり、肝の不調を招いてしまいます。
「気・血・水」は重要な構成要素ですが、実はストレスも「気」と東洋医学では考えます。
ストレスが過剰になりすぎると「気滞」といって、気=エネルギーが停滞することを意味します。
気滞は熱を生む原因になるだけでなく、血液や水の巡りを妨げる原因にもなります。
血液や水の循環が悪くなると、からだは「勢いよく送る」指示を出します。
これが血圧を上げることにつながると考えられます。
しかし、その根本原因である気滞やストレスを取り除かない限り、ずっと「勢いよく送る」ことを続けなければなりません。
漢方でのアプローチはこの原因に着目して「肝」の不調を和らげます。
高血圧ではよほど高い数値にならない限りあまり自覚できる症状が現れませんが、五臓のバランスが崩れることによってあらゆる不調がみられることは少なくありません。
なんとなくの不調やほんの少しのストレスも、降り積もっていくと大きな問題になりかねません。
「病気」だと診断される前に、漢方でのケアを取り入れてみるのはいかがでしょうか。
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