「頑張りが足りない」「気持ちの問題」

うつは、今でもこうした言葉で片付けられてしまうことがあります。また、自分自身がそう言い聞かせてしまうことも多いです。

けれど、漢方の視点から見ると、うつは心の問題だけではありません。

ホルモン、血流、水分代謝、エネルギー量など・・・

体の内側のバランスが崩れた結果として、心がついていかなくなる状態です。

実際、女性は男性よりもうつになりやすいことがわかっています。

これは性格の違いではなく、体の仕組みとライフスタイルの影響が大きく関係しています。

女性は男性よりもうつになってしまう方が多い

厚生労働省の統計では、女性は男性のおよそ2倍、うつを含む気分障害を発症しやすいとされています。

うつや双極性障害(躁うつ病)などの精神疾患は、一度深くなってしまうと回復までに時間がかかることが少なくありません。

だからこそ大切なのは、「頑張れなくなってから」ではなく「なんとなくおかしい段階」で対処することです。

  • 気分が落ち込みやすい
  • 以前は平気だったことが辛い
  • 眠れない、または寝すぎてしまう
  • 理由のない不安や焦りが続く

これらは、心の弱さではなく、体のSOSのサインかもしれません。

女性がうつになりやすいタイミング

女性の人生は体の変化と密接に結びついています。

「変化の多い時期=不調が出やすい時期」と考えましょう。

①ホルモンが変動する時

  • 思春期
  • 月経(毎月の月経をはじめ、はじめての月経(初潮)、閉経などの時期)
  • 妊娠
  • 出産
  • 産後
  • 更年期

女性の体は、月単位・年単位でホルモンが大きく揺れ動きます。

この変動は、自律神経・感情・睡眠に直接影響します。

特に、「月経前に気分が落ち込む」、「産後に涙もろくなる」、「更年期に理由なく不安になる」など・・・・

これらは「気持ちの問題」ではなく、体が変化についていけていない状態です。

②環境やライフステージが変わる時

  • 結婚
  • 仕事
  • 育児
  • 介護

こういったライフイベントの際に、

「周囲に相談できない」

「家事との両立が求められる」

「弱音が吐きづらい立場」

こういった環境に陥ってしまうと、責任が増える一方。でストレスを内側に溜め込みやすくなってしまうとされています。

漢方からみるうつの原因

漢方では、体と心はしっかり連動していると考えられています。一見当たり前のように思いますが、実はこれは科学的にはまだ、詳細はわかっていません。

体の中の巡りが滞ったり、体に必要なものが足りない結果、心が病んでしまうと考えます。

①ストレス

強いストレスが続くと、体のエネルギーの流れが滞り、胸が苦しくなったり、ため息が増えたりします。

「怒りっぽくなった」「考えが止まらない」「カーッとなってしまう」

これは体のエネルギーがスムーズに流れずに滞り、感情が噴火しやすくなってしまっています。

②水分代謝の低下

体に余分な水分が溜まると、

  • 頭や体が重く感じる
  • 浮腫む
  • 胃がもたれたり、痞えているように感じる

といった状態になりやすく、気分の落ち込みとセットで現れることがあります。

水分がどこかに溜まってしまうと、体の循環が乱れ、脳にエネルギーや血がしっかりと届かなくなってしまいます。

その1つの症状として、メンタルが悪化する等が考えられます。

③エネルギー不足

忙しさや無理が続くと、体のエネルギーはどんどん消耗されてしまいます。

体を動かすためのエネルギーが不足してしまうので、「頑張りたいのに頑張れない」「やる気が出ない」「食べる元気もない」といった状態になってしまいます。

これらは怠けでなく、体のエネルギー切れのサインです。

④血の不足

漢方では、「血」はただ細胞に栄養を届けるだけでなく、心を安定させるために不可欠とされています。不足すると、

  • 不安感
  • 動悸
  • 眠りが浅い
  • 足がつりやすい
  • めまいや立ち眩み

このような症状が現れるとされています。病院で貧血と指摘されるときは、漢方的には血の不足がかなり進行している状態です。貧血でなくても、このような症状がある場合は血が不足してしまっている可能性が高いです。

⑤年齢からくる「腎」の弱り

漢方では、五臓六腑のうちの1つに「腎」という臓腑があります。

この臓腑は生命力の源とされており、発育と生殖に関わっているとされています。

一般的にいう「腎臓」よりも定義が幅広く、子供の時には成長に関わり、大人では老化に深くかかわっています。また、体を潤したり、温めたりする力もあるとされています。

10代~40代は無理がききますが、その無理が積み重なり、不調が長期化してしまうと、生命力の貯金である「腎」が消耗します。

「理由がないのに気力がない」「物忘れするようになった」

といった状態に陥りやすくなってしまいます。

1人でなんとかしようとせず、相談しましょう

頑張り屋さんな方ほどうつになりやすい傾向があります。

そういう方ほど、限界まで我慢してしまう方が多いかと思います。

でも、うつは気合いで治るものではありません。

体の状態を整え、エネルギーを補い、巡りを良くすることで、心は自然と回復に向かいます。

漢方相談では、

  • 今どこが不足しているのか
  • 何が滞っているのか
  • 無理を積み重ねてきた背景

これらを一緒に紐解いていきながら、あなたに合った方法を考えていきます。

「こんなことで相談していいのかな」

そう思う段階こそ、実は一番大切なタイミングです。

どうか1人で抱え込まず、あなたの体と心の声を、聞かせてください。

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