「夏はたくさん汗をかくからデトックスになる」

「汗をかけばかくほど健康」

そんな話を聞いたことはありませんか?

たしかに、汗をかくことには体温を調節する大切な役割があります。

しかし、東洋医学では汗を『出せば出すほど良いもの』とは考えません。

実は汗は、からだにとって大切な“水分”のひとつです。

かき方や量、体質によっては不調につながることもあるのです。

今回は、夏の汗を西洋医学と東洋医学、それぞれの視点から見てみましょう。

汗をかくのはどうして?

汗をかく最大の目的は、体温を一定に保つことです。

暑い環境や運動によって体温が上がると、自律神経が汗腺へ指令を送り、汗を分泌します。

汗が皮膚の表面で蒸発するときに熱が奪われるため、体温が下がります。

よく、「汗をかくとデトックスになる」「老廃物が汗と一緒に出る」なんて言われますが、本当にそうなのでしょうか。

たしかに汗の中にも尿素や乳酸などの老廃物はごくわずかに含まれています。

しかし、汗の99%は水分であり、老廃物の排出量はごく少量です。

私たちのからだで老廃物の排泄を担っているのは、主に腎臓(尿)腸(便)です。

排出割合は、およそ尿から70~80%、便から20~25%、汗からは1%未満だと言われています。

つまり、デトックスの中心は「尿」と「便」であり、汗は体温調節を担うことが主な役割なのです。

汗を出す働きは自律神経がコントロールしています。

そのため、ストレスや睡眠不足などで自律神経のバランスが乱れると、「汗をかきすぎる」「汗が止まらない」、逆に「汗をかきにくい」といった変化が現れることもあります。

とはいえ、汗は決して不要なものではありません。

では、東洋医学では汗をどのように捉えているのでしょうか。

汗はにおうもの?実は「汗そのもの」はほぼ無臭だった

「汗をかく=くさい」というイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、実は汗そのものには、ほとんどにおいはありません。

汗の99%は水分で、かいたばかりの汗は無臭です。

では、なぜ汗がにおうことがあるのでしょうか。

その理由は、汗の種類や皮膚の細菌にあります。

体温調節のために全身から出る「エクリン腺」からの汗は、ほとんどが水分でにおいはほとんどありません。

一方、脇などにある「アポクリン腺」からの汗は、タンパク質や脂質などが含まれています。

これらを皮膚の常在菌が分解することで、においが発生します。

また、本来は無臭のエクリン腺からの汗でも。

 ・大量に汗をかいて長時間そのままにしている

 ・汗をかきにくい生活が続き、汗腺の働きが低下している

 ・食生活の偏りやストレスが続いている

といった状態では、においが強く感じられることもあります。

汗をかく場所にも意味がある

実は、汗をかく部位にはそれぞれ特徴があります。

例えば、

 ・全身の汗:暑さや運動による体温調節

 ・手のひらや足の裏:緊張やストレスなど精神的な影響

 ・脇:感情の変化などに反応する汗

など、それぞれ働きが異なります。

特に手汗は、自律神経の働きと深く関係しています。

東洋医学でも、汗のかき方は体質や心身の状態を知る手がかりのひとつと考えます。

「どこに」「どんな汗を」「どれくらいかくのか」も、からだからのサインなのです。

東洋医学でみる汗

汗は津液の一部

東洋医学では、汗は単なる水分ではありません。

からだを潤し栄養を運ぶ大切な体液である「津液(しんえき)」の一部と考えています。

津液は、血液とは別に全身を潤し、皮膚や粘膜、関節などの働きを支えています。

そのため、汗をかきすぎるとからだの潤いが不足しやすくなります。

さらに東洋医学では、「汗は心(しん)の液」という考え方もあります。

汗をかきすぎると、心の働きにも影響し、動悸や疲労感、めまい、不眠などにつながることもあると考えられています。

「たくさん汗をかく=健康」とは限らない

汗をかくこと自体は悪いことではありません。

しかし東洋医学では、体質によっては汗のかきすぎに注意が必要な場合があります。

 ・陰虚(いんきょ)の場合:からだの潤いが不足した状態では、ほてりや寝汗、のどの渇きなどが起こりやすくなる

 ・血虚(けっきょ)の場合:血が不足してからだを十分に養えず、疲れやすさやめまい、乾燥などがみられやすくなる

このような状態で大量の汗をかくと、さらに潤いや血を消耗し、不調が長引くこともあります。

激しい運動だけでなく、ホットヨガやサウナなど、高温・多湿な汗をかきやすい環境下での娯楽も流行していると思います。

しかし、汗は“出すもの”ではなく、“失うもの”として考えることも大切です。

だからこそ東洋医学では、“汗をたくさんかくこと”ではなく、その人の体質や季節に合った汗のかき方・過ごし方を大切にしています。

さいごに

汗は、体温を調節するだけでなく、東洋医学ではからだを潤す大切な「津液」の一部だと考えられています。

「汗をかけばデトックス」「たくさん汗をかくほど健康」という一つの考え方だけでなく、自分の体質や体調に目を向けることも大切です。

汗のかき方は、その日の体調や心身のバランスを映し出すサインかもしれません。

東洋医学では、そうしたサインを丁寧に読み取り、ひとりひとりの体質や生活習慣、自律神経の状態までからだ全体を見ていきます。

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