9月に入り、厳しかった夏の暑さも和らぎ始めました。
季節が移り変わっていくのを実感する一方で、こんな体の変化を感じていませんか?

「なんだか食欲がわかない」
「少し食べただけで、胃が重たくもたれる感じがする」
「しっかり消化できていない気がする」

こうした秋口の変化は、夏の間に蓄積した冷えや疲労が、表面化しているサインかもしれません。

東洋医学では、この時期の食欲不振や胃の不調を「脾胃(ひい)」という視点からひもといていきます。

1.なぜ夏の終わりに、食欲不振や胃の不調が出やすいの?

東洋医学では、夏の厳しい暑さが続くと、「気(き)」が少しずつ消耗していくと考えます。
「気」とは、身体を動かし、日々の生命活動を支えるエネルギーのことです。
この「気」が不足すると、全身のだるさや疲労感を感じるだけでなく、食べたものを消化して体に必要な栄養を取り込む「脾胃」の働きも弱まってしまいます。
さらに夏場は、暑さをしのぐために冷たい飲み物やアイス、生野菜などを口にする機会が多くなります。
冷たいものは胃腸を直接冷やし、思っている以上に負担をかけています。
そのため、暑さが和らいできた秋口になって、「最近食欲が出ない」「胃の調子がすっきりしない」などと感じるのは、この時期になって急に悪くなったわけではありません。
夏の間に知らず知らずのうちに溜め込んだ冷えや疲労が、脾胃の働きの低下として表れてきたからなのです。

2.「脾胃」ってどんな働きをしているの?

「脾胃」は、特定の臓器そのものだけを指す言葉ではありません。
食べたものを消化し、栄養を吸収して、全身へ届けるという「消化吸収の仕組み全体」のことを表しています。
この仕組みは「胃」と「脾」という二つの働きが互いに支え合って成り立っています。

  • 胃の役割:口から入ってきた食べものを受け止め、細かく消化し、下へスムーズに下す
  • 脾の役割:消化された食べものから必要な栄養や水分を吸収し、身体全体へ巡らせる

脾胃は、毎日の食事から「身体を動かすエネルギー(気)」や「身体をつくる栄養(血)」を生み出す中心地です。
そのため、この中心地である脾胃の機能が滞ってしまうと、どんなに体に良いものを食べたとしても、それを日々のエネルギーや栄養として十分に活かせなくなってしまいます。

3.脾胃の低下が「食欲不振や胃の不調」につながる仕組み

では、脾胃の働きが落ちることが、なぜ食欲低下や胃の不調につながるのでしょうか。

その理由は、消化と吸収の働きが滞ってしまうことにあります。

まず、胃の「消化して下に送り届ける力」が弱まると、食べたものが処理されず胃の中に長く留まるようになります。
これが、食後に感じる「胃のもたれ」や「胃が重い」という不快感の理由です。

次に、脾の「栄養を吸収して全身へ巡らせる力」が落ちると、身体は効率よくエネルギーを作れなくなります。
すると身体は、これ以上消化しきれないものを入れて負担を増やさないよう、防衛反応として「今は食べものを入れないでほしい」というサインを出します。
これが「食欲がわかない」状態です。

また、脾には身体の中の水分代謝を整える働きもあります。
脾の働きが鈍ると不要な水分が溜まりやすくなり、みぞおちの張り感や、すっきりしない消化不良を引き起こしてしまいます。

このように、脾胃の処理能力を超えてしまうことで、そのまま胃腸全体の不調へとつながっていくのです。

4.今日からできる、脾胃をいたわる3つの養生法

①温かい料理を中心に

弱っている脾胃に負担をかけないよう、食事はしっかりと火を通した温かい料理を基本にするのがおすすめです。
スープやポトフ、味噌汁など、じっくり煮込んで柔らかくした料理は、身体へスムーズに栄養が行き渡りやすくなります。
飲み物は常温や温かいものを選び、生野菜を食べる時は温かいスープと一緒に摂るなど、お腹を温かく保つ工夫を取り入れてみましょう。

②腹八分目を意識し、よく噛んで食べる

満腹まで食べずに「もう少し食べられる」ところで箸を置くことで、胃の中に食べものが長く留まるのを防ぎ、胃腸の負担軽減につながります。
また、一口あたりしっかり噛むことで唾液とよく混ざり合い、細かく噛み砕かれた状態で胃に送られるため、脾胃の消化をスムーズに助けます。

③「黄色い食材」や「自然な甘み」で気を補う

脾胃の働きを高める色と味は「黄色」と「自然な甘み」とされています。
かぼちゃ、さつまいも、にんじん、栗、米などは、冷えや疲労で消耗した「気」をやさしく補う食材です。
砂糖の甘さではなく、素材そのもののほのかな甘みを日々の食事に取り入れてみてください。

5.おわりに

秋口に感じやすい食欲不振や胃の不調は、夏の間に溜まった冷えや疲労が「脾胃」に表れているサインです。
負担を感じるときは無理に食べようとせず、温かい料理を選んだり、一口ずつよく噛んで食べたりなど、日々の工夫を重ねることが、本来の働きを取り戻すことにつながります。

本格的な秋を迎える前に、できることから脾胃をいたわり、元気に過ごすための土台を整えていきましょう。

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