1.霜降とは?(2025年10月23日~11月6日)
「霜降(そうこう)」は、朝晩の冷え込みが一段と強まり、地域によっては草や地面に霜が降り始める頃です。
紅葉が色づき、秋の深まりとともに、冬の気配が少しずつ近づいてきます。
東洋医学では、この時期から自然界の「陰(いん)」の気が増し始めるとされ、私たちの体も呼応して、外向きの活動から休養・回復を重視する季節に入っていきます。
気温差や乾燥が進むことで、体調を崩しやすくなる時季でもあるため、無理をせず、体と心を整える「冬の準備期間」として過ごすことが大切です。
2.霜降に起こりやすい体と心の変化
❖体にあらわれやすい不調
霜降の頃は、気温差や乾燥の影響で、身体にさまざまな不調が現れやすくなります。
例えば・・・
- 手足の冷え、関節のこわばり、肩こり
- 喉のイガイガ、空咳
- 肌の乾燥、鼻の不快感
- 風邪をひきやすくなる
- 胃腸の不調(食欲のむら・お腹の冷え・便通の乱れ)
- だるさ、眠気、疲れやすさ
この時期は、「なんとなく調子が出ない」といった不調が増える傾向があります。
東洋医学では、これを「未病(みびょう)」と捉え、悪化する前に気づき、ケアすることが大切とされています。

❖霜降と五臓の関係
東洋医学では、霜降の頃に影響を受けやすい臓器は「肺」と「脾」とされています。
- 肺(呼吸・免疫)
肺は乾燥や冷えに弱く、機能が低下すると喉の不調、空咳、鼻づまり、肌荒れなどの症状が現れやすくなります。
肺が弱ると、気・血・水の巡りが悪くなり、免疫力が低下し、倦怠感も生じやすくなります。 - 脾(消化・吸収・栄養供給)
脾は飲食物から気や血を作り出す重要な臓器で、冷えや湿に弱いとされています。
寒さや湿気、ストレスで脾の働きが落ちると、消化不良、食欲不振、便秘や下痢、倦怠感などが起こりやすくなります。
霜降の養生ポイントは、体を内側から温め、「気(エネルギー)」と「潤い」を守ること。
エネルギーを消耗しないように注意しながら、乾燥から身を守るケアが必要です。
3.霜降の養生ポイント
①体の内側から温める
冷えは表面だけでなく、内臓の働きにも影響を与えます。
特に胃腸や腎(じん)が冷えると、疲れ・むくみ・頻尿・消化不良などが起こりやすくなります。
- 白湯、生姜紅茶、味噌汁など「温性」の飲み物・食べ物を意識する
- 生もの・冷たい飲み物を減らす
- 温灸やカイロなどで「おへそ周り」や「仙骨(骨盤上部)」を温める
②潤いを「守る」ケアを意識
霜降の時期は、乾燥し過ぎないように気をつけましょう。
肌や喉がピリついたり、鼻がムズムズするのは、乾燥のサインかもしれません。
- スキンケアでは、オイルやバームを活用し、潤いを逃さない
- 鼻・喉の乾燥には、湯気の吸入やぬるま湯うがいがおすすめ
- 室内の湿度は50~60%を目安に
③心も「内側に向かう」準備を
日照時間が短くなるため、自然と心も内向きになりやすい時期です。
心の安定を保つためにも、無理に明るく元気に振る舞おうとせず、心を休める時間を大切にしましょう。
- 予定を詰め込みすぎず、休息時間を意識的につくる
- 夜はスマホやテレビなどの強い刺激から離れ、静かな時間を過ごす
- 内観や日記など、自分を見つめなおす時間を持つ
- お香・アロマなどでリラックスし、深い呼吸を意識する
感情のこわばりは免疫に影響を及ぼすとされています。
感情の波をそのまま受け止めることも、立派な養生です。

4.霜降におすすめの食材&生活習慣
①おすすめ食材
- りんご:秋が旬のりんごは、肺を潤し、乾燥による喉のイガイガや空咳、肌のかさつきを和らげるとされています。
消化の働きを助ける作用もあり、寒暖差で食欲が乱れやすい時期にぴったりです。
皮ごと食べることで、食物繊維やポリフェノールも効率よく摂取できます。
生食のほか、コンポートや焼きリンゴにして体を温める食べ方もおすすめです。 - 里芋:脾(=消化器系)を整える働きがあり、冷えによる消化力の低下や、便通の乱れに効果的です。
粘り成分が腸を潤すため、秋の乾燥による便秘予防にも役立ちます。
温かい煮物やお味噌汁、蒸し料理などに取り入れましょう。 - 椎茸:うま味と香りが豊かで、料理の味わいを深めてくれる秋のきのこ。
脾や肺を助け、季節の変わり目に起こりやすい疲れやだるさ、胃腸の重だるさを和らげると言われています。
また、体の巡りを整える効果もあり、寒暖差や乾燥による不調を軽減してくれます。
炒め物、煮物、スープ、鍋料理など、幅広く活用できるのも魅力です。

②おすすめの生活習慣
- 眠りの質を整える
霜降を迎える頃、自然界は少しずつ「休息モード」へと移行していきます。
人の体も同じように、しっかりと休み、エネルギーを回復することが大切な時期です。
夜更かしや就寝前の強い刺激(スマホやブルーライト)などは、交感神経を高めて眠りの質を下げる原因になります。
意識的に照明を落としたり、温かい飲み物をとったりして、心と体を「副交感神経モード」に切り替える時間をつくりましょう。
深い眠りは、心と体を内側から整えてくれます。 - 足元から温める
霜降の冷えは、足元からじわじわと体に入り込みます。
東洋医学では「足は第二の心臓」とも言われ、足元の冷えは全身の巡りを滞らせる原因になります。
就寝前の足湯は、体を芯から温め、リラックスした深い眠りを助けてくれます。
足湯が難しいときは、寝る前にお湯やシャワーで足を温めるだけでも十分です。
また、湯たんぽやレッグウォーマーなどで足先や足首を冷やさない工夫もおすすめです。
足元を温めることは、冷え対策だけでなく、心身の緊張をほぐし、ぐっすり眠れる効果も期待できます。 - デトックスより「滋養」を意識
霜降の時期は、これから訪れる冬に向けて体を整える大切な準備期間です。
体がエネルギーを補い、寒さに備えるためには、温かく消化にやさしい食事で体をいたわる「滋養」のケアが必要です。
無理な断食や生野菜中心の食事は、体を冷やし、エネルギーを消耗させる原因になります。
そのため、温かいスープや煮物、旬の根菜などを意識的に取り入れ、体を内側から温めましょう。
食事は過剰にならず、バランスを意識することがポイントです。
こうしてエネルギーを蓄えることが、冬を健やかに過ごす力につながります。

5.おわりに
霜降は秋が深まり、自然がゆっくりと冬の準備を始める季節です。
私たちの体と心も、外に向かう活動から内側の休息と回復へと切り替わっていきます。
この時季は、無理をせず、自分の体調や気持ちにじっくり向き合い、ゆったりと過ごすことが大切です。
温かい飲み物や食事で体をじんわり温め、乾燥から肌や喉を守りながら、小さな休息の時間を積み重ねていきましょう。
忙しい日々の中でも、自分を大切にする時間をつくることで、冬に向けての準備が自然と整っていきます。
季節の変わり目を感じながら、毎日の暮らしにやさしいケアを取り入れてみてくださいね。
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